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  取材

K−1
THE HEAVYWEIGHT CHAMPIONSHIP OF THE WORLD
LORDS of the RING 3
SUNDAY 28TH FEBRUARY 1999



2月28日(日)、ゲストとして招かれている、RINGS UK代表リー・ハスデル選手の運転する車で、我々は武蔵選手の試合がおこなわれたシビック・ホールに向かった。

約2時間の道中、リー選手と将来の夢を語り合い、あっという間に到着した。途中で軽い食事も御馳走になりました。

会場に着き、さっそくリー選手からプレスパスをもらい、我々3人で武蔵選手の控え室へ。控え室には、武蔵選手と湊谷トレーナーがリラックスしたムードで、バンテージを巻いていた。挨拶を終え、コンディションなどの確認をする。武蔵選手は、早くからオランダに入っており、時差ぼけなどはない様子。

ただ、今回、前日、前々日と、試合とほぼ同じ時間である9時30分ごろに実践練習をしようと、道場での練習の手配をしたのだが、連絡不行き届きなどの理由で実現せず。

湊谷コーチと公園にて調整していた。控え室にはモニターがなく、試合会場の様子がまったく分からない状態。時間をつぶす方法がない為、「はぁ〜。早く闘いたいな〜」と、武蔵選手。

コンディションの良さがうかがえる。湊谷トレーナーにバンテージを巻いてもらいながら、武蔵選手は、高まる気持ちを押さえつけているように見えた。武蔵選手の体重は、契約体重である94.5kgよりも軽い92kg。

どうやら、ホテル生活では、食事が思うようにコントロールできないのと、あまりおいしくないヨーロッパの食生活に悩まされて減ってしまった様子だ。

「タイ米じゃない、おいしいお米が食べたいですよ」と、ぼそっとつぶやく武蔵選手。やはり日本人ならどうしても、おいしい米を食べたくなってしまう。「だけどタイよりましだけどね」と、湊谷トレーナー。

「今日、日本人少ないのかなー?」(武蔵)「街を歩いてても、日本人がほんとにいなかったな〜。 オランダもそうだった。」(湊谷)
「ロンドンでは日本人に会わない日は無いですよ。」(副会長)
こんな、他愛も無い会話を繰り広げた。控え室は、終始落ち着いたムード。
途中カメラマンの方も入ってきて、日本とこちらの客質の違いについて話し合う。こちらの客が、地元選手のみを応援するのに対し、日本人客は、どの選手の試合も平等に観る。

逆にちょっとでもつまらない試合があると日本人に対してももブーイング。また、こちらの会場では、リングサイドにテーブルが用意されてあり、食事をしながら試合を楽しむというスタイルをとっている。日本から見ると、テーブル席は後ろの方に置くのが自然に思える等。

副会長が、試合の様子を見に行ってる間の会話。

湊谷「もし、これでタイトル取ったら、海外での試合が増えるかもしれないでね〜。実力も付いてきたんで、海外を武蔵が楽しめるようになったらね〜。」
武蔵「そうですね〜。」

アキラ「カークウッド・ウォーカーって、でっかい選手ですよね〜。」
湊谷「いや、背は武蔵よりすこしちっちゃいですよ。」
アキラ「1回テレビで見たことあるんですよ。全然倒れない人・・・」
湊谷「あー、それはマッド・スケルトンですよ」
アキラ「・・・・・・・・・」
控え室には、まったりムードが漂ってしまいました。

湊谷「どうでなんですか?。フリーファイトってこっちでは人気あるんですかね?リングスみたいな試合」
副会長「うーん。一般的に格闘技って、あんまり盛んではないですよ。」
湊谷「そうでしょうね。」
副会長「俗に言うコアなファンには、バーリトゥードは人気ですけどね・・・。 オランダの様に、格闘技が盛んな所は別ですけどね。」
湊谷「オランダは、しょっちゅう試合あるみたいですね。選手が豊富なんで、海外からのお呼びが多いみたいですよ。チャクリキなんか、いっぺんに3個所行かなきゃいけないとか・・・。イギリス・フランス・イタリアと。」
副会長「そうなんですか。」

湊谷「オッ、武蔵、緊張して来た様だな。でもタイの時よりはいいな。タイの時は、緊張する間もなくリングに上がったから・・・。突然。『早く早く』って言われて、『次の次の試合じゃなかったか?』って言ったら、『次だ』って。それで雨も降ってきてね〜。」
湊谷「日本でも結構あるんですけどね。急にTVの関係で休憩入ったりして、『せっかくアップしたのに・・・』とかね。まー、その度に怒るんですけどね。(笑)」

副会長「(笑)TVですか〜。こっちにいると、なかなかK−1のビデオとか見れなくて残念なんですよ。」
湊谷「こっちにいらっしゃるから、知らないでしょうけど、K−1は2つになったんですよ。」
副会長「えっ! 2つになってるんですか?」
湊谷「だから今日も、日テレとフジと両方来てるんですよ。 だから、すっごい忙しいですよ。 前回やったのいつだっけ?」
武蔵「2月3日です。」
湊谷「それをKOで勝って、今回これやるでしょ。そんで今度3月22日」
副会長「すっごいハードじゃないですか」
湊谷「だから今回これ終わって帰って、3日間だけ好き放題遊べって」
武蔵「はい」
湊谷「リセットできないですからね。」

その後、副会長が大学時代に習っていた新空手の会話に。

湊谷「新空手経験者なんだ〜。じゃあ、今日、武蔵のセコンドに付いてよ」

副会長「えっ!!僕でいいんですか?喜んでさせて頂きます。」

湊谷「こっちも助かるよ。新空手の経験者だったら、安心して手伝ってもらえるよ。なぁ?」

武蔵「よろしくお願いします」

 こうして、前回のRINGS、金原選手の時と同様に、今回もまたまた、副会長に大役が回って来た。セコンドでの、タイムキーパーをする事になった副会長。トコトン、ツイている男である。

石井館長が会場に到着した。 プレスパスカードを持っていない為、副会長が手配する。
館長「今、体重いくつだ?」
湊谷「91〜2です」
館長「落としすぎちゃうんか」
湊谷「いえ、大丈夫です」
武蔵「やるだけです。押忍」

そして、控え室にレフェリーが来て、ルールの説明がおこなわれた。ルールを通訳した後、石井館長の意向により正道会館の関係者のみに。我々も、お邪魔にならない様に退場した。

WAKO-PRO.WORLD HEAVYWEIGHT TITLE-THAIBOXING 5x3 min ROUNDS

(WOLVERHAMPTON UK.)KIRKWOOD WALKER vs MUSASHI(OSAKA JAPAN)



大歓声の中、武蔵選手が赤コーナーに入場。しっかりとイギリスのファンにアピールし、コーナーへ。コーナーでは湊谷トレーナーの指示をしっかり聞き、深く頷く。まさに、闘志が漲っているという言葉がふさわしい表情だ。

ゴングが鳴り1R。武蔵選手のローキック、そしてミドルキック、パンチが炸裂する。相手もしっかりディフェンスし、一進一退の攻防。私も湊谷トレーナーも、大歓声をかき分けて、武蔵選手の耳に届くように、大声を張り上げる。湊谷トレーナーからは、「その距離、その距離」と、武蔵選手の距離を維持するよう指示が出る。両者譲らぬまま1R終了。

セコンドの私からは、武蔵選手の動きが冴えているように感じた。

2R開始。1Rと変わらぬ一進一退の攻防。若干、武蔵選手のローが利いているように思えた。武蔵選手の距離で闘えていると思う。ただ、時折、接近戦になると、相手のパンチを食らう。決定打ではないが、パンチがかすめる度に、地元観客からの大声援


。この雰囲気は、ジャッジにはあまりいい印象を与えないので、セコンドとしては、武蔵選手の距離を保つように指示を出す。

2R終了。インターバルの間、湊谷トレーナーから、ローを出すように指示が出る。私も「相手ロー嫌がってますよ」というと、ちらっとこちらを見て、「押忍」と一言。

3R開始。このラウンドは、私の目からは、武蔵選手が取ったと思われた。

ローが利いている。相手がディフェンスの時に、嫌な顔をした。次のローの時、ディフェンスが流れた。利いている証拠だ。

そしてスリップ。ポイントにはならないが、明らかに武蔵選手が押している。日本人観客から、「武蔵―っ、勝てるぞーーっ!」の声。外国人観客からも「カモン、ムサシッ!」の声。アウェイなのにも関わらず、武蔵選手に対しての声援が飛ぶと言う事は、イギリスの観客も、目が肥えているのか?いや、違う。武蔵選手の実力が、伝わったのだ。

第3R終了。インターバルの最中、石井館長も「ロー利いてるぞ。 左足の内腿狙え。」「押忍」(武蔵)石井館長と武蔵選手の距離、約5メートル。会場には、インターバルの間、ガンガン音楽が流れていたが、その大きさを物ともせず、声が届いた。師弟の深い絆を感じた一幕であった。

4R開始。このラウンドは、少し武蔵選手が最終ラウンドの為に、体力を温存したかに見えた。相手の選手のパンチも炸裂。ただ、大事には至らない・・・。

第4R終了。最後のインターバルの時、湊谷トレーナー「いいか、3分。この3分。 あと3分でチャンピオンだぞ。 分かるか?」武蔵「僕、ポイント取れてますか?」ここで、湊谷トレーナーの気持ちの中に、アウェイという不利な状況がよぎったのだろう。「ポイント?そんなん考えんでいい。狙っていけ!倒していけ!ローや、ローや!。練習でやったやつや!。

全部出し切れ!!」武蔵「押忍!!」「武蔵さん、もうすぐチャンピオンですよ。 相手ロー嫌がってますからね。いけますよ!!。絶対勝てますから!!。」武蔵選手がこちらを一瞬見て、深いため息を吐いた後、自信を持って「押忍!!」

「セコンドアウト、セコンドアウト」最後のインターバル終了。

泣いても笑っても、この3分。最終ラウンドも、また一進一退の攻防が続く。その攻防に、会場は興奮のるつぼに。試合終了。



私と湊谷トレーナーにも、会話は無い。ただ、思いはみんな1つだった。ジャッジの結果、武蔵選手判定負け。くやしい。本当にくやしい。僕がこれだけ悔しいのだから、武蔵選手、湊谷トレーナー、石井館長の悔しさは、計り知れない。それでも、武蔵選手は、最後まで観てくれた、ファンの方々に、深い感謝の気持ちをこめて礼。

控え室に帰る途中、たくさんのファンが寄ってきた。中には、「お前の勝ちだ」と、言い寄ってくる外国人のファンもたくさんいた。

通路では、みんなが武蔵選手に道を開け、拍手を贈ってきた。一生懸命闘った者と、それを感じた者。リングと観客との距離が埋まり、一つになった瞬間だ。格闘技に国境はない。 と、改めて実感できた。"正道会館・武蔵" 彼等は、この名前を忘れる事はないだろう。


関係者しかいなくなった通路で、「チクショーッ!」武蔵選手が、大声で叫んだ。誰も声をかけられなかった。

報道陣シャットアウト。

しばらくして、石井館長が出てくる。武蔵選手のコスチュームとトロフィーを預かっていた、私とアキラが、真っ先に控え室に入る。「ごめんなさい。 ホントにごめんなさい。

せっかく応援して、手伝ってもくれたのに、勝てなくて・・・」武蔵。この一言に尽きるだろう。武蔵選手の懐の深さが分かる言葉。 くやしくない筈はない。だが、最後まで、"押忍"の精神を、貫き通した武蔵選手。一人の人間として、非常に尊敬できる方だった。


「本当に助かりました。 ありがとうございました」湊谷トレーナー。「このお二方に出会えて良かった」そう実感した。画面に出てくる表の顔だけでなく、裏の顔も、好青年だった武蔵選手。武蔵選手の力を、100%出し切れるようにサポートしている湊谷トレーナー。


これからも、もっともっと、世界に飛び立って欲しいと思いつつ、会場を後にした我々だった。

武蔵選手、湊谷トレーナー、正道会館の関係者の方々、そして、なにより、今回チャンスを与えてくれたリー・ハスデル選手に、心より感謝いたします。

LWF副会長 & AKIRA


 
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